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Rikke Darling

Rikke Darling

Northern Lights

オーロラから触発された有機的な線と吸い込まれるような光。

ノーザン・ライト。オーロラ。そうした名称自体が北国の夜空を波のように流れる光を想像させる。この整然と混ざり合う透明なエネルギーは雷光のようなパワフルな光で空を照らす。しかしノーザン・ライトは驚くべき静謐さで、見る者が想像しうるあらゆる色相に変幻する。このビジョンにミュージックをつけるのは私たち自身。様々な連想が心に浮かぶ。「フィンランド人の先祖からの影響で、このシリーズはノーザン・ライトというタイトルにしました。ノーザン・ライトは主に北極圏で見られます。緑生い茂る南の国々と比べたら、この地域に育つ植物は小ぶりで、自然は荒々しく大地が剥き出しです。足りない色彩を補うために、大自然がノーザン・ライトを創造してくれたのだと信じたくなります」

ノーザン・ライトの透明な色調は混じり合い、人が理性的に判別したがる明解な色にはならずに、新たな色合いに変わる。見る者はそれを受け容れ、自分自身の感情や想いに浸ることになる。「色に生命が宿るように、顔料に水とワニスを混ぜ、自然な液体の流れに任せました。人の手ではつくれない色の星座とエネルギーを生み出すのです。コントロールしようとせず運命に任せることで深遠な絵画が体験できます」 色彩豊かな光の海は見る者の視野を得て、空全体に波動を拡げる。好奇心旺盛な人なら、目を閉じることなど考えも及ばない。

 

「しっかりコントロールしたラインとディテールを、色彩の有機的な動きと対照させています。その軽さや重力をどう捉えるかはこの絵を見て下さる方次第ですが、この絵の世界の探索には見て下さる方のリードが必要です。私が意識的に描いた要素はその探索のガイド役となるのです」挑戦的な言語で表現されたこの絵画は、内なる宇宙の発見の旅に好んで出ようとする人々すべての心に響く。 「私のアートはどこにでも存在する対比を明確に表現するものです。そのなかに普遍なるパラドックスが見えてきます。

 

私にとってもインスピレーションを与えてくれるジャーニーであり、私の絵を見て受けいれて下さる方にとってのインスピレーションになることを望んでいます」日々の暮らしから受ける影響を反映して、解釈は変化する。毎日新たなディテールが出現し、絵画はパワフルなエネルギーを伴う主観的体験として、心に響き渡るのだ。

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Rikke Darling 1975年、デンマークのコペンハーゲンで生まれる。幼い頃からの大都市暮らしと初期に出会ったアートの師たちの影響を受け、幅広い分野の絵画を探索するようになった。しかし、この シリーズに見られる力強さとディテールへのこだわりはそうしたアートの世界からの影響だけによるものではない。コペンハーゲン・ファッション・デザイン・アカデミーでデザインとイラストレーションを学び、さらにコペンハーゲン・ビジネススクール、デザイン&コミュニケーション・マネジメントの修士課程で学んだ体験からも大きな影響を得ている。

 

安らぎを創り出す透明性、そして輪郭に光と陰を用いる手法にはファッションの世界からのインスピレーションがみられる。この特殊なゲシュタルト手法により、見る者は脳裏で作品に秘められた思想を感じとり自分なりに解釈することができる。ニットやウール、毛皮や糸など、粗々しい、またはきめ細かな素材づかいでストラクチャーを確かに感じさせている。入念に吟味されたディテールの豊かさはファッション界からの影響。ディテールが違いを生む好例といえるだろう。

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光を求めて彷徨う、生命の起源。

初めてこの絵を見たとき、キャンバスの表面に何かが発光しているような有機的な線がうごめいていて、ある種の心地良い毒気を感じた。線の行き着くところは、画面をはみ出し宇宙の果てにまで伸びて行きそうである。そもそも、絵画というものが、フレームに収めてその中で表現しようとすること自体が無理なことである気がする。私は、クリエイティブな作業というものは、宇宙との交信だと思う。果てしなく遠い世界に広がる宇宙ではなく、心の内面に向かって行くインナースペース。見る人のイマジネーションによって、どのようにでも捉えられる抽象絵画は、自己の体験が影響してくる。彼女の作品に惹き付けられる理由は、私の生まれ故郷の北国の厳しい冬を思い浮かべるからかもしれない。

 

約46億年前、宇宙のビッグバンより地球が誕生して最初の生命が海の中で生まれたとき、生物の最小単位である微生物が真っ暗な海の中で光を求めてうごめいていた。中世代に入り、身体の大きな恐竜が現れ氷河期へと突入した。恐竜達は大きな身体ゆえにその寒さから自らの命を守ることができなかった。日中、太陽に照らされた氷は表面が少し溶けて、夜になるとまた凍る。そのわずかに溶けた氷の水滴に身を潜め、微生物達は地表の割れ目に潜り込みマグマの近くまで辿り着いて暖を取った。

 

いつしか、氷河期は終わり、地表では恐竜達が絶滅したところへ、地割れの隙間を這い上がり光を求めて地表へ辿り着いた。そして、この絵を見ているとこれらの微生物達のように過酷な環境から、光を求めてなんとか生き延びようとする生命の逞しさを感じる。人間も含めて、生きるということは光という名の希望を求める生き物なのかもしれない。凍てつくような寒さの中で、私たちの祖先である微生物が光を求めて彷徨い続けるように、そのDNAがこの絵に惹き付けられるのである。

EXHIBITION

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